贈与税の税務調査を徹底解説。調査担当部署はどこ?調査の進め方は?
2021/9/27
2021/10/04
この記事の監修
フィンテリックス総合会計事務所 税理士中山 正幸
1955年12月生まれ/長崎県長崎市出身
国税局では主に国際税務・調査業務に携わる
平成27年税務署長に就任、翌年退官。
平成28年8月税理士登録
贈与税の調査予告を突然、受けるとびっくりしますよね。ましてや、日頃、税務署とのお付き合いがない方にとっては、今後、どうなるのか?多額の税金を納税しなければならないのか?
今回は、贈与税の税務調査はどこまで見るのかを解説していきます。
贈与税の調査担当部署
贈与税の調査を担当するのは税務署の資産課税部門になります。資産課税部門では、相続税、贈与税や土地等及び有価証券等を譲渡した場合に課税される所得税等についての調査及び相談業務を行っています。
これら税目の税務調査は税務署だけでなく、国税局の課税部にあります資料調査調査課においても行われていますが、国税局の場合、基本的に相続税の調査をメインとしています(税務署の資産課税部門も同様です。)ので、贈与税の調査の大半は税務署が実施しているといっても過言ではありません。
贈与税とは?
そもそも、贈与税とはどのような場合に課税されるのかといいますと、他の個人から財産を貰った場合に課税されると理解してもいいと思いますが、それ以外に馴染みのない「みなし贈与」という言葉が出てきます。
国税庁の「タックスアンサーNo.4402 贈与税がかかる場合」によると、みなし贈与は、自分自身が保険料を負担していないにも関わらず保険金を受け取った場合や債務免除を受けた場合などには、贈与があったとみなされて課税されるとされています。
なお、贈与税は、1月1日から12月31日までの1年の間に贈与を受けた財産の合計金額から基礎控除(110万円)を差引いた額に対して課税されます。
また、平成27年以降の贈与税の税率は、一般贈与財産と特例贈与財産に区分され、税率が異なりますので注意が必要です。
一般贈与財産
基礎控除後の課税価格 | 税 率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
この税率は、兄弟間、夫婦間、親から子のへの贈与で子が未成年者の場合に使用します。
特例贈与財産用
基礎控除後の課税価格 | 税 率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
この税率表は、直系尊属(祖父母・父母等)から贈与された年の1月1日に20歳以上の者(子・孫等)への贈与に使用します。
贈与税の調査の進め方
贈与税の調査の端緒
個人間の贈与というものは、毎年、定期的に行われるものではありません。税務署から見れば突発的に行われた贈与がその後に贈与税の申告書として提出されるということになる訳です。
法人税や所得税のように毎年、確定申告書が提出される訳ではないので、年度ごとの数字の推移を分析するということはありません。
したがって、法人税や所得税の税務調査のように帳簿や納品書・請求書・領収書などは登場しません。あくまで、個人間で行われた贈与の事実及び贈与された財産の種類・金額の確認が中心となります。
そのため、贈与税の調査が開始されるきっかけは、相続税の調査や法人税・所得税の調査を実施している過程に発見されることが多いです。
例えば、相続税の調査で銀行預金の入出金を調べていたところ被相続人の預金から孫名義の預金に資金が移動しているのを把握したなどということです。
この場合、孫名義の預金が贈与によるものか、それとも被相続人の名義預金であり、相続財産に含めるべき財産なのかといったところが調査の主眼になってきます。調査の結果、贈与であることが確認されたが、贈与税の申告がなされていないということになれば、贈与の調査が開始されることになります。
また、税務署や国税局の調査官は調査等のため銀行や証券会社に臨場して調査対象者の口座を調べる訳ですが、実際は、それだけではありません。調査対象者以外の口座についても調べています。そして、その内容を「資料せん」としてデータ化しています。データ化された資料は、国税当局の蓄積資料の一部となる訳です。
このような蓄積している資料情報を分析すると、中には贈与と思われる資金や財産の移動が発見され、これを端緒として贈与税の調査が開始されることになります。
贈与税の調査で確認されること
贈与税の調査で一番重視されるのは、贈与の事実があるのか、贈与されたとされる財産の帰属は誰なのかということになります。
税務署の調査官が贈与の事実を確認するには外形的な事実をもってしか確認することはできません。そのため、贈与契約書を作成しているか、贈与税の申告は行っているかなどを確認することになります。
贈与税の申告をしているからといって、安心はできません。必ず、受贈者(財産を貰った人)にその財産を受け取ったという認識があるのかを確認します。
それ以外に次のようなことも聴取されます。
- 財産の開設・購入時での申込を行ったのは誰なのか。
- 契約書・申込書等の署名は誰がサインしたのか。
- 通帳・権利書・会員権などの管理・保管を行っているのは誰なのか。
- 財産に関わる郵便物の受取先は誰なのか。
- そして、財産の取得に係る資金の出所。
相続税の調査などで、贈与の事実を主張したいのであれば、これらの証拠書類の提示と事実関係の供述が出来ないと相続財産であるとの認定がされる可能性が高いといえます。逆に、贈与税の調査で贈与の事実を否定したいのであれば、これらに反証できる事実の提示と供述が必要となってきます。
まとめ
贈与税は相続税を補完する税であるとよく言われます。
相続税法では「被相続人からその相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときには、その人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額を加算する。」としていますので、相続税と贈与税は密接な関係にありますし、贈与の有無は相続税の計算にも影響を及ぼします。
また、相続税を意識しないとしても(結果的には意識していることになりますが)贈与は日常から発生する可能性があると言えます。
親が息子や孫に「お金をあげる」「住宅の購入資金を援助する」など例を挙げれば、きりがないほどではないかと思います。
しかし、税務署は目を光らせて申告漏れを探しています。住宅取得等資金の贈与などに関しては非課税となる優遇措置がありますので、贈与する前に税理士へ相談して適正な申告を行うことが必要であると考えます。