サラリーマンの税務調査、どこまで見る?国税OBが税務調査の裏側解説します

2021/9/27

2021/09/27

この記事の監修

フィンテリックス総合会計事務所 税理士中山 正幸

1955年12月生まれ/長崎県長崎市出身
国税局では主に国際税務・調査業務に携わる
平成27年税務署長に就任、翌年退官。
平成28年8月税理士登録

通常、サラリーマンの方々は給与に対する源泉所得税を源泉徴収され、年末調整により納税は完結します。

毎年2月から3月にかけて行われる所得税の確定申告などは別世界のことで、自宅を購入したなどがなければ、税務署とかかわりを持つなどということは考えもしないでしょう。

しかし、個人的に暗号資産(以前は仮想通貨と呼ばれていたもの)やFX(外国為替証拠金取引)を通じて売買を行っているとしたら、どうでしょう。

売買をするということは、そこには利益や損失が発生する訳です。年間を通じて利益となった場合には、当然、所得税の確定申告をしなければいけません。

今回は、暗号資産や外国為替の売買が税務上、どのように取り扱われるのか、そして、税務調査の状況を解説したいと思います。

暗号資産及びFX取引の税務上の取扱い

⑴暗号資産の税務上の取扱い

①暗号資産取引の所得の種類

暗号資産取引で発生した利益(所得)は原則として雑所得に該当するとされています。事業規模である場合には、事業所得として税務署も認めますが、度々、雑所得なのか事業所得なのかをめぐって納税者と国税で訴訟になっています。

雑所得と事業所得では、損益通算の面で取扱いが異なるため、訴訟にまで発展している訳ですが、ここではサラリーマンの税務を前提にしていますので、雑所得として話しを進めます。

②暗号資産取引の確定申告

暗号資産の売買取引で利益が出た場合の課税方法は、他の給与所得や不動産所得、事業所得などと合算され、総合課税で確定申告しなければいけません。

所得の種類としては、前述のように雑所得に該当しますので、雑所得以外の所得で発生した損失との損益通算ができないことになります。

これをもう少し詳しく説明しますと、暗号資産の取引で発生した損失を同じ雑所得に該当する他の取引の利益と通算することはできる(雑所得の中で発生した取引の利益と損失は相殺できるということです。)が、雑所得以外の所得から暗号資産取引の損失を差引くことは出来ないということです。

損益通算できる所得は限られていて、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の損失はできるとされています。

たがって、雑所得において損失が発生したとしても、その損失を他の所得から差し引くということはできない訳です。

ここで、暗号資産という資産を譲渡したのだから、譲渡所得ではないのか、損益通算できるのではないかという疑問があると思います。

国税庁が令和3年6月に発遣している「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」における「暗号資産取引により生じた利益は、所得税法上の何所得に区分されますか。」という問いに対して「暗号資産取引により生じた利益は、所得税の課税対象になり、原則として雑所得に区分されます。」と答えています。さらに解説として「暗号資産取引により生じた損益は、その暗号資産取引自体が事業と認められる場合、及びその暗号資産取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合を除き、雑所得に区分されます。」としており、はっきりと書いてはいませんが事業所得に該当する場合もあると解すればよろしいと思います。

⑵FX取引の税務上の取扱い

①FX取引の所得の種類

FX取引とは、外国為替の売買を一定の証拠金を担保にして、レバレッジをかけて行う取引(証拠金の何十倍もの金額で取引)と言われています。

これらFX取引で発生した所得は、雑所得に該当するとされていますが、「先物取引に係る雑所得等」として、他の雑所得とも区分されています。

②FX取引の確定申告

FX取引は、先物取引に係る雑所得に該当するため、それ以外の雑所得と損益通算ができないばかりか、合算もできません。申告分離課税と言って、確定申告をする場合、独立して課税が行われます。

税額は、各種の所得金額を合計する総合課税と異なり、他の所得金額と合計せずに分離して計算することになります。

税率は、国税15%+復興特別税0.315%+地方税5%=20.315%になりますので、所得金額の増加に伴い税率が増加していく累進課税とは異なります。

暗号資産取引及びFX取引の税務調査

暗号資産取引及びFX取引は、その取引業者に対して支払調書を所轄税務署長に提出する義務が課せられています。

暗号資産取引に関しては、以前、支払調書の制度が無く、一時期はマスコミで「仮想通貨バブル」とか「仮想通貨長者」といった言葉が躍りましたが、令和2年度税制改正で支払調書の対象となり、「マイナンバー、氏名、住所、支払金額など」が国税当局に情報として提供されます。

これら支払調書は、税務署において確定申告の内容と突き合わせが行われ、内容が不一致の場合、税務署への呼び出し、もしく税務調査が開始されるなどがあると思います。

税務調査といっても通常のサラーリーマンの場合は、収入は給与に限られるため、税務署からすれば簡単に結論が出る調査になるでしょう。

まとめ

税務署に提出される支払調書は、必ず、調査官の手により確定申告の内容と一致するか確認されます。支払調書の目的は、税務署に納税者の収入額を正確に把握させるためと言われていますが、それだけではなく、支払調書の制度により納税者に申告を促すものと言えます。

どれだけ収入があったのかは税務署に筒抜けです(損失のほうは税務署には分かりません。)ので、あなたがサラリーマン(そうでなくても)だとしたら、適正に申告することをお勧めします。

もし、税務署から税務調査の予告がありましたら、税理士に依頼して、認められる経費や損失取引などの相談をするしか手はないと思います。

元税務署OB税理士、金融機関出身税理士が
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