国税庁OBが解説。税務調査がやってくる時期は?法人税・所得税・相続税の調査の時期は?

2021/9/27

2021/10/04

この記事の監修

フィンテリックス総合会計事務所 税理士中山 正幸

1955年12月生まれ/長崎県長崎市出身
国税局では主に国際税務・調査業務に携わる
平成27年税務署長に就任、翌年退官。
平成28年8月税理士登録

税務調査は、税務署からの突然の調査予告の電話から始まります。法人税の調査、所得税の調査、相続税の調査、どの税務調査もいつ頃に実施されるのか不安ですよね。

今回は、それぞれの税務調査がいつ頃実施されるのか、その目安を解説したいと思います。

税務署の事務年度

税務署の事務は7月1日~翌年6月30日を1事務年度として廻っています。会計年度(4月1日~翌年3月31日)とは異なります。

そのため、税務署での年度末は6月になります。会社でもそうですが、年度末に向けて仕事を収束させつつ、翌年度に向けて仕込みを始めるということを税務署でもやっています。

しかし、どの税目の部署も一律、同じようなサイクルで仕事をしている訳ではありません。それぞれの部署の特色に合わせたサイクルで調査を実施しています。

今日は、それぞれの税目でどのようなサイクルで仕事をしているのかを解説したいと思います。

法人税の調査の時期

税務署で法人税の調査を担当する部署は法人課税部門になります。前述のように税務署の年度末が6月だとしたら、その年度に調査対象として扱う申告書は何月までに提出された申告書なのかということになります。

ズバリ言いますと、1月決算の法人税の申告書(正確に言うと3月末までに提出された申告書)が6月末までの調査対象ということになります。

したがって、1月決算法人であっても、申告期限の延長をしている場合には7月以降の調査の対象になることになります。時系列で考えますと、2月決算・3月決算・4月決算の法人の申告書がそれぞれ、4月末・5月末・6月末までに提出されます。

これらの申告書は提出後、税務署の法人課税部門において翌事務年度(7月以降)の調査のために資料情報や財務内容の分析が行われます。

そして、翌事務年度である7月に新メンバーに引継ぎされます。

新メンバーは、6月下旬か7月の初旬(税務署の定期異動の辞令交付が7月10日のため)に旧メンバーから納税者(会社)に調査予告された事案について調査着手することになります。

調査予告の時には「誰が担当者になるか決まっていませんが、会社にお伺いする日時を決めたい」「後日、担当者が決まったら、連絡する」として旧メンバーが調査の日程を決めてしまうわけです。これは、人事異動後の調査着手をすぐにできるようにするため、このような調査の通知方法を採っている訳です。

7月の調査はこのように行いますが、それ以降の税務調査については、新メンバーが調査着手の候補となっている申告書を再度見直しを行い、調査対象の選定を再度行うことになります。

このように見ていきますと、2月決算法人に始まり、翌1月決算に終わるサイクルの申告書を7月で始まり、翌年6月で終わる事務年度で処理していると言えます。

ご存じのように、3月決算と12月決算の法人が多いのは事実ですが、決してそれだけではありません。それ以外の決算月の法人も数多くあります。

それでは、どの決算月の法人が調査の対象になり難いのか?ということが知りたくなりますよね。

本当のところ、決算月によって調査の対象になりやすいとか、なり難いというのは、ないと思っています。あえて言いますと1月決算ではないでしょうか?

1月決算の申告書は3月末に提出される訳です。

申告内容の入力などを考えると調査担当部署に申告書が交付される時期(昨今は電子申告が多いので、正確にはデータの出力可能となる時期)は4月下旬頃になります。

もうこの時期になると税務署の調査官は6月の年度末に向けて、調査着手中の事案の手仕舞いや当年度における自分自身の成績や所属する部門の成績の調整の必要が生じてきます。

特に、部門の調査件数が足りないなどの場合、調査件数の帳尻合わせのため、比較的小規模(これは調査に時間がかからないという意味です。)の法人を調査部門の統括官が調査官に対して追加指令したりする訳です。

このように年度末に向けて何かと忙しい時期に調査部門に渡される1月決算法人の申告書はややチェックが甘いと言えなくもないかと思います。(必ず、甘いという訳ではありません。)

だからと言って、1月決算に変更すれば、税務調査は来ないのかといいますと、そんなことはなく、税務調査は決算月だけでなく、資料情報や財務諸表等の分析で選定作業を行っていますので、そんなに単純ではありません。あくまでも、申告書の提出期限から見て税務調査の選定作業が少しばかり甘くなっているのではないかと思われる程度でお考えください。

所得税の税務調査

税務署で所得税の税務調査を担当する部署は、個人課税部門になります。個人課税部門の場合、毎年行われる確定申告事務を中心に調査が実施できる時期を考えることになります。

事務年度については、法人課税部門などと同様に7月~翌年6月ですし、定期人事異動の辞令交付も7月10日ですので、何ら違いはないのですが、個人課税部門の場合は、暦年(1月1日~12月31日です。)で事務の流れと調査着手について、ご説明したほうが分かりやすいと思います。

1月は確定申告事務の準備と調査事案で前年の12月までに決着がつかなかったものの手仕舞いを行いますので、新規の調査着手はありません。

2月16日~3月15日及びその前後、早くいってしまえば2月・3月は調査担当も含め、確定申告事務にどっぷりと浸かっていますので、調査はありません。

4月も確定申告事務の延長のようなことをやっています。事後処理といって、確定申告で誤りのあったものの、減額更正や軽微な誤りの修正申告書の慫慂(しょうよう)を行っています。

5月及び6月は、7月以降(人事異動以降)の調査のために、調査事案の選定、準備調査などを行っています。それと並行して、若干ですが新規の調査に着手する場合があります。

7月は、7月10日の辞令交付以後、新メンバーが揃うと、署内での研修などを実施するとともに、速やかに調査に着手することになります。よって、7月の下旬から個人課税部門は調査の時期に突入です。これは、12月の年末まで続きますが、基本的には年末までに調査は終了することになっています。

年が明けると確定申告事務の準備が始まります・・・・・。こうやって、1年間が廻っていきます。大雑把に言うと、個人課税部門では、年の前半は確定申告事務、後半は調査事務をやっていると言えます。

相続税の税務調査

相続税の申告は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行う」ことになっています。被相続人が亡くなってから相続税の申告書を提出するまで10ヶ月も経ってから、やっと申告書を提出する訳です。

相続税は、法人税や所得税のように「決算期」や「3月15日」といったものがありませんので、申告書の提出もバラバラで計画を立てようがないと思いますが、税務署では、新聞の訃報欄などを日頃からチェックしており、「〇〇×△氏の(相続税)申告はいつまでだ」といった管理は行っています。

相続税の申告書が提出されると、税務署は申告書に添付されている財産明細書に記載されている金融機関などに取引照会を行います。照会文書の回答が出揃ったところで、相続税の申告内容と齟齬がないか、過去の所得税、法人税などの申告書の内容と照らし合わせて問題点はないかなどを分析します。

特に相続財産の大きなものについては、国税局の資料調査課(資産税を担当する課)が税務署にやって来て、局が担当する事案(特別調査事案:特調事案)の選定と局が署の調査官に指導する事案(指導事案)の選定を行います。

この特調事案等の選定は、人事異動(7月10日)直後から7月末までに行われます。

このようなことから、税務署の相続税調査は8月からスタートします。そして、12月初旬までに調査は終了するのが原則です。12月は調査の手仕舞いと翌年の確定申告の準備が開始します。

資産課税部門も個人課税部門と同様に確定申告を中心に事務が廻っていますので、年の前半は確定申告、後半は調査というのが原則です。

申告書を提出してからどれぐらい経過すれば、税務調査が来なくなるのかといった質問を受けることがあります。

国税通則法から考えれば、原則5年もしくは、「偽りその他不正の行為」があった場合には7年です、としか答えることができません。

しかし、相続税の場合は、確定申告事務と調査事務のサイクル及び申告書の提出のタイミングにより、申告書を提出した日の属する年の8月~12月初旬もしくは翌年の8月~12月初旬のどちらかで調査が実施される可能性が高いと思います。たまに、1年ずらして着手する場合もありますので、翌々年の8月~12月初旬を過ぎれば、まず調査があることはないと思います。都合、3年間調査がなければ、よほどのこと(新たな資料情報を税務署が入手したなど)がない限り、調査はないでしょう。

まとめ

昨今は、内部事務をできるだけ削って調査件数を増やすというのが、国税庁の方針の為、どの調査部門にも共通して、少しでも隙間時間(日数)があったら調査に充てるようですので、油断はできません。イレギュラーな時期に来るかもしれませんが、ほとんどの場合は本文の通りのサイクルで税務署は動いています。

今回は、それぞれの税目での特有の調査サイクルがある点をご理解いただけたでしょうか?いつ来るのか考えるより信頼の出来る税理士に対応を任せて、一安心というのはいかがでしょう。

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